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Category: テクノロジー

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[Stripe Sessions レポート] AIエージェントと EC の未来と課題について

<p>Stripe Sessions 2025 では、AI エージェントの利活用や「エージェントコーマス」に関するディスカッション(ブレイクアウトセッション)が複数ありました。その中でも、Browserbase や /dev/agents の CEO・ Rye の Head of Ops そして Stripe の Product Lead が参加されたセッション「<a href="https://stripe.com/jp/sessions/2025/ai-agents-reshaping-the-way-we-buy-and-sell" target="_blank" rel="noopener noreferrer">AI agents: Reshaping the way we buy and sell</a>」について、この記事では簡単に紹介します。</p><h2 id="h53f73f8eb7"> EC サイトや消費者ニーズの現状</h2><p>このセッションでは、AIエージェントが消費者行動とeコマースの未来をどのように形作るか、企業はこれらの変化にどう対応すべきか、そして実践するためのネクストステップについてディスカッションがありました。</p><p>まず現在地点の確認として、消費者が AI をどのように活用しているかや、オンラインでの購入プロセスについて話題になりました。 日々最適化や研究が進められている EC の購入プロセスですが、まだまだ消費者が自身で考えたり行動したりするステップが残っています。パネリストは具体例として掃除機の購入プロセスを紹介されていました。新しい掃除機を購入するとなった場合、まずどの掃除機を買うべきかを比較調査します。その後候補に挙がった掃除機のうち、自身が思う適切な価格で購入できる商品やストアを探しにいきます。 EC サイトの購入フローに消費者がたどり着くまでの時点で、すでに彼らはいくつかのアクションや判断を求められています。</p><p>また、EC 事業者の視点でも、自動化 bot や AI エージェントに対する見方を変える必要性に迫られているそうです。これまでウェブサイトを訪れる bot といえば、検索サイトのインデックスか、それとも不正利用などを試みる悪意のあるシステムのどちらかでした。しかし現在では様々な AI エージェントがそれぞれに指示を出した消費者の疑問に応えようとして、 bot としてサイトにアクセスしてきます。そのため bot アクセスを一律に遮断するなどの不正対策を行なっている場合、今後増加するであろう AI エージェントによる商品検索などのシナリオから、自社の EC サイトが除外されてしまう可能性が生まれています。このように企業が bot やエージェントをどのように対応し、受け入れていくのかを考える必要に迫られています。</p><h2 id="h873478f688">EC サイトにおける AI エージェントの可能性と課題</h2><p>商品の選択や最適価格の調査など、消費者がオンラインで買い物をする際に行なっている様々なタスクを、 AI エージェントはどのように効率化してくれるでしょうか? Sessions 2025 の Product Keynote でデモがあったように、すでに AI エージェントを使って商品の検索や注文を試みる仕組みやデモなどは登場しつつあります。</p><div style="left: 0; width: 100%; height: 0; position: relative; padding-bottom: 56.25%;"><iframe src="https://www.youtube.com/embed/bVQwIZYk9UM?rel=0" style="top: 0; left: 0; width: 100%; height: 100%; position: absolute; border: 0;" allowfullscreen scrolling="no" allow="accelerometer *; clipboard-write *; encrypted-media *; gyroscope *; picture-in-picture *; web-share *;"></iframe></div><p>しかし一方でまだまだ課題も残されています。ディスカッションのなかでは、「<strong>人間が自分で行うよりも迅速で楽しい体験を提供する必要がある</strong>」ことが指摘されていました。購入を提案する商品の選択精度はもちろん、処理時間がかかりすぎる場合にも、「自分でやったほうがよい」と消費者が判断してしまうことになります。パネリストはセッションの中で、「人間が自分でやるよりも遅いシステムより悪いものはありません。AIエージェントはユーザーに対して、より楽しく、効率的な体験を提供する必要があるのです」とも話されていました。このような課題を解決できるかが、エージェントコマース普及に向けたキーポイントの1つになりそうです。</p><p>また、ユーザー体験についての可能性と課題についても話題になりました。すべてを AI が実施するのではなく、買い物の中で消費者が楽しみたいと思っている部分や体験については残し、退屈な作業になりがちな部分の自動化にフォーカスする必要があるということです。セッションを聞いていた感想としては、EC における AI エージェントは百貨店の外商のような体験を提供するようになるのかなと思いました。顧客のことをよく理解し、忘れているであることや繰り返し実行しているタスクなどを裏側で自動的に実行する。それによって買い物というアクティビティを 100 % 楽しめるような体験を提供することが理想系に感じます。</p><h2 id="hd19e63d70c">AI によって変わる買い物体験</h2><p>続いてユーザー体験や買い物のあり方が今後どのように変わるかのディスカッションに移りました。</p><h3 id="h0b60fb45d9">AI ネイティブなストアが生まれる可能性</h3><p>まず話題になったのは「クラウドキッチン」(実店舗を持たず、デリバリーのみに特化したレストラン)の EC 版が生まれる可能性についてです。実店舗やウェブサイトを持たず、AIエージェント向けのインターフェースのみを提供する新種の小売業者が登場するかもしれません。現在ですと、 MCP サーバーのみ提供するようなイメージでしょうか。このような新しい注文体験やモールなども、この後登場し、買い物の体験が変わってくる可能性もありそうです。</p><h3 id="h21954e3a4a">パーソナライゼーションの強化</h3><p>また、パーソナライズについての話題もありました。現在の検索エンジンでは「無限の検索結果の1ページ目」が表示されるだけですが、AIエージェントはユーザーの好みや過去の行動に基づいて高度にパーソナライズされた提案を行うことができます。これによって商品を効率的に探すことがかのうになり、顧客満足度が大幅に向上する可能性があります。ユーザーにとっては、より自分に合った商品との出会いが増えることになります。</p><h3 id="hde22313f52">買い忘れの予防によるカゴ落ち率改善</h3><p>もう一つの話題は、「買い忘れ」についてでした。「そろそろ買おうと思っていたけど、なんだかんだ買わずに過ごしてしまっている」ような体験は誰しもあると思います。日用品の買い物もですが、誕生日や祝い事のギフトを買い忘れて慌てるということも経験したことはあるのではないでしょうか。このような買い忘れ問題についても、 AI エージェントがお知らせするだけでなく、商品の選定や提案・購入まで行ってくれるようになることで、人間にありがちなうっかりミスを減らせるのではないかという話題がありました。</p><h3 id="hb4baac47d0">ユーザーの制御感と便利さのトレードオフ</h3><p>しかし一方ですべてを AI エージェントに任せることへの疑問も提示されました。ユーザーは買い物における全てのステップを煩雑に感じたり、AI に任せたいと考えているのかについて、事前に検証する必要があります。例えば候補の絞り込みまでは AI が行い、最終的にどの商品にするかの決断や色やオプションなどの選択は人間が行うようなフローも考えられます。このステップをギフトや嗜好品などで自動化すると、却って顧客の買い物体験を損なうのではないかという指摘がありました。反面、オフィスの消耗品などであれば、あらかじめ設定した予算枠の範囲内で必要な量だけを選択して注文できる完全自律型の AI エージェントは非常に重宝されるでしょう。このように、 AI が自動化する範囲と人間への判断を求める部分とのバランスをストアやユースケースごとに見極めていくことが重要だということです。</p><p>また、購入フローを自動化した場合には、「顧客はどのような操作を取り消しできるか」についても設計や説明する必要があるという指摘もありました。顧客が望んでいないものを購入し、それが取り消しできないという体験は、エージェントに対してだけでなく、ストアやブランドに対しても悪印象を持たれてしまいます。高額な決済などの重要な決断についてはユーザーへの確認を求める、エージェントが自律的に購入まで行うかどうかや、自動購入の閾値を設定できるような仕組みなども今後はうまれてくる可能性があります。このような仕組みを用意することで、エージェントによる意図しない購入から生まれる大量の返品といったストア側のリスクも軽減できます。</p><p>先のディスカッションであった、「<strong>人間が自分で行うよりも迅速で楽しい体験を提供する必要がある</strong>」を念頭に置いたユーザー体験の設計から行うことが、もしかするとエージェントコマースを成功させる鍵になるかもしれません。そしてこのような設計を行うには、消費者がいる場所で消費者と会って会話する、顧客理解の必要性が高まってきているという話にも広がりました。</p><h2 id="h6fbe578c33">エージェントコマースのユースケース</h2><p>この他、エージェントコマースの実用的なユースケースについてのディスカッションもありました。</p><p><strong>エージェントコマースによる、新しい購入体験</strong></p><p>まず紹介されたのは、AIエージェントによる予算管理です。「1日にX円まで使用可能で、予算オーバーの場合はテキストで連絡」といったルールや条件を設定することで、ユーザーは支出を気にせず買い物を楽しめるようになります。これはオフィスの消耗品や家庭での日用品などで重宝される可能性が高そうです。また、発展系として予算だけでなく消費量や残高をチェックすることで定期的な再注文までも自動化する方法についても言及がありました。このあたりは<a href="https://developer.amazon.com/ja/docs/dash/ja-dash-replenishment-overview.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer"> Amazon の Dash Replenishment </a>などが、先行事例やベンチマークになるかもしれません。</p><p><strong>注文処理フローの自動化</strong></p><p>さらに、カスタマーサポートから返金処理まで、EC における注文や顧客体験フローでAIエージェントが担うシステムについても提案がありました。<a href="https://fin.ai/" target="_blank" rel="noopener noreferrer">Intercom の Fin </a>などはすでに AI によるキャンセル・返金などもサポートしており、業務改善の一環や、 AI エージェントを導入する第一歩目としても注目が集まりそうです。</p><h2 id="h2ec2fcd3d3"><strong>エージェントコマース時代に向けた next action</strong></h2><p>最後に、現実的な次のステップについてのディスカッションがありました。ストア側では、先ほど提案のあったようなユースケースについて、 PoC レベルでの実証実験や新しい販売チャネルとしての検討を進めることが提案されました。また、開発者に対しては、 <a href="https://docs.stripe.com/agents?locale=ja-JP#online-purchasing" target="_blank" rel="noopener noreferrer">Stripe が開発者プレビューで提供する新しい購入フロー</a>をテストしてみるなど、社内でエージェントによるコマース体験について話し合うための実物を作ってみることがお勧めされていました。</p><p>また、遠い将来の話として、 AI が人間と同じかそれ以上のことをできるようになった世界についての話もありました。そのような世界になった場合、ウェブサイトやアプリの操作性は全く新しいものに変わり、それによってウェブは再び「人間のためのもの」になるかもしれないとのことです。</p><p>個人的な感想ですが、エージェント的な振る舞いを簡単に試せる MCP を利用して、 PoC やデモを作ってみることが、エージェントコマースの未来を覗き見る簡単な方法かもしれません。</p><h2 id="ha214098e44">まとめ</h2><p>このセッションでは、AI や AI エージェントの発達と普及によって、 EC サイトでの体験やストア側のワークフロー・そしてオンラインでの購入体験そのものがどのように変わっていくかのディスカッションが行われました。すべてを AI にまかせるのではなく、「ユーザーはストアでどのような体験を楽しみたいか?」を意識すべきという点は、開発者としてハッとさせられた点です。どうしても新しい技術やツールなどを学ぶ・手に入れると、すべてのものに適用してみたくなります。しかし自動化や効率化を「顧客が楽しみたいと思っている機会を奪う」ために使うことは、本末転倒です。「 AI をどう使うか。取り入れるか」も重要ですが、「そもそも顧客はなにを楽しみたいと思っていて、なにを煩わしいと思っているか」を理解することを第一に置く必要があるでしょう。</p><p>AI や自動化に関するセッションの中で、最終的に「顧客理解」やそのための顧客との対話の重要性を再確認できたという点も興味深い体験でした。 AI による変革は不可避な流れに感じます。しかし全てのルールが変わり、今までの経験が活かせなくなるというわけではなく、むしろ顧客や事業・プロダクトなどに対する理解がある人がより有利になる世界になるような気がしました。</p><p>「こういうことができたら、もっと喜んでもらえそう」「ここステップ、煩雑だけどどう解消すればいいかわからないなぁ」のような業務の中で感じた小さなモヤモヤを記録して、 AI ならどう解決できるかを試行錯誤する。そんなところからでも、変革がはじまるかもしれませんね。</p><div class="iframely-embed"><div class="iframely-responsive" style="height: 140px; padding-bottom: 0;"><a href="https://stripe.com/jp/sessions/2025/ai-agents-reshaping-the-way-we-buy-and-sell" data-iframely-url="https://cdn.iframe.ly/api/iframe?url=https%3A%2F%2Fstripe.com%2Fjp%2Fsessions%2F2025%2Fai-agents-reshaping-the-way-we-buy-and-sell&amp;key=c271a3ec77ff4aa44d5948170dd74161"></a></div></div><script async src="https://cdn.iframe.ly/embed.js" charset="utf-8"></script>

岡本 秀高

開発者

Stripe Sessions 2025 のスポンサーブースで気になったサービスを勝手に6つ紹介します

<p>BizDev &amp; RevTech Dev の岡本秀 ( <a href="https://twitter.com/hidetaka_dev" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">@hidetaka_dev</a>)です。今回は Stripe Sessions 2025 参加レポートとして、 スポンサーブースエリアの気になった展示企業・サービスについて紹介します。</p><p>ユニークな開発支援サービスだけでなく、日本ではあまり見ることのないソリューションやビジネスモデルなどもありましたので、ぜひユーザーとしてだけでなく日本での新規事業企画の参考にもしてください!</p><h2 id="h3833a3b809">1. Clerk: 認証と課金を一体化した新プロダクトが登場</h2><figure><img src="https://images.microcms-assets.io/assets/673f54f935574821bac7ee65829d6fb5/561d6873872444fab2ed11380e2ca46f/IMG_6350.jpg" alt="" width="5712" height="4284"></figure><p><a href="https://clerk.com" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">Clerk公式サイト</a> | <a href="https://clerk.com/billing" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">Clerk Billing</a></p><p>最初に紹介するのは、認証系 SaaS の「<a href="https://clerk.com" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">Clerk</a>」です。今回の Stripe Sessions に合わせて、Stripe Billing を活用した統合機能「Clerk Billing」の公開ベータを発表しました。</p><p>これまで認証と課金は別々のサービスで管理することが一般的でした。しかし Clerk の新機能「Clerk Billing」では、これらを一体化します。事前に Clerk ダッシュボードで料金プランや機能の設定を済ませておくと、アプリケーション側ではただ <code>&lt;PricingTable /&gt;</code> などのコンポーネントを配置するだけで、料金表やサブスク管理などのUIと機能実装が実現できます。</p><p>Next.js を利用したアプリにこの Clerk Billing を組み込む方法をブログ記事にまとめています。こちらもぜひ参考にしてください。</p><p><a href="https://wp-kyoto.net/get-started-clerk-billing-with-nextjs" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">Next.jsとClerk Billingを使用したサブスクリプション管理の実装方法</a></p><p>私が Clerk に注目する理由の一つが、開発者体験を重視している点です。公式サイトによれば、多要素認証はもちろん、20種類以上のソーシャルログイン対応、使い捨てメールドメインのブロックなどの詐欺防止機能も備えています。実装面でも React、Next.js、Remix などのモダンフレームワーク向けに最適化された SDK と UI コンポーネントを提供してるのもよいなと思っています。</p><p>Stripe との関係についても面白いことになっています。今回のネイティブ連携だけでなく2024年1月に Clerk は Stripe から3000万ドルの投資を受け、戦略的パートナーシップを形成しています。 Stripe をサービスに組み込む際の認証基盤として、今後も強力なインテグレーションが登場し続けるのではないかと個人的にはとても期待しています。</p><p>料金についても、最初の10,000人の月間アクティブユーザーまでは無料で利用可能なので、小〜中規模のプロジェクトであればほぼ無料で使える・試せるのもいいですね。</p><h2 id="h8f2d5a28dc">2. Stigg: 料金モデルや機能フラグの管理をよりシンプルに</h2><p><a href="https://www.stigg.io" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">Stigg公式サイト</a> | <a href="https://www.stigg.io/" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">エンタイトルメント管理について</a></p><p>次に紹介するのは「Stigg」です。料金モデルの複雑化と機能フラグの管理という、SaaS 開発者が直面する2つの大きな課題を解決するサービスで、今回ブースにてスタッフと一番話し込んだサービスです。</p><figure><img src="https://images.microcms-assets.io/assets/673f54f935574821bac7ee65829d6fb5/07ceac1ff7d54cd6a60ee8ea2ae924c5/IMG_6557.jpg" alt="" width="5706" height="4280"></figure><p>多くの SaaS 企業は成長とともに料金プランが複雑化し、どの機能をどのプランに含めるかの管理が次第に複雑になりがちです。機能フラグを管理するデータベースを構築したり、 Stripe 上に metadata を駆使して構築するなどの方法があるでしょう。Stigg はこの問題を「エンタイトルメント管理」という概念で解決しようとしています。</p><p>Stigg は柔軟性に富んでおり、すでに Stripe Billing を使っているサービスに後から追加することも可能です。もちろん Stigg 単体で決済機能を実装することもできます。開発者が機能単位で細かくアクセス制御を行える点も魅力的でしょう。一時的に特定の機能を一部ユーザーへ限定提供するなどの制御もおこなえるとのことでして、新機能の先行リリースやベータテストなどにも使えそうです。</p><p>2024年12月には1750万ドル(約25億円)の資金調達に成功し、Miro や AI21 Labs などの企業がすでに採用しているとのこと。特に AI 機能など、新しい価格モデルを迅速に導入したい企業にとって強力なツールになるかもしれません。</p><h2 id="h3bc0fa8b35">4. Amazon Pay: 来るか Stripe 連携の全世界対応</h2><figure><img src="https://images.microcms-assets.io/assets/673f54f935574821bac7ee65829d6fb5/64d2eafc43224cd2a0f9db01daecf322/IMG_6493.jpg" alt="" width="5712" height="4284"></figure><p>個人的にやっぱりあるよねーと思ったブースの1つが Amazon です。実はアメリカの Stripe ユーザーは、 Stripe で実装した決済フローにワンクリックで Amazon Pay を導入することができます。</p><p><a href="https://stripe.com/jp/payment-method/amazon-pay" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">Amazon Pay による決済を受け付ける | Stripe</a></p><p>まだアメリカのみで利用できる機能なのですが、日本や世界中の Stripe アカウントで利用できるようになれば、EC 方面での Stripe の存在感がさらに増しそうです。</p><h2 id="h7bcbf04dbd">4. This Dot Labs: Stripe Apps エコシステムを活用した新しいビジネスの形</h2><p><a href="https://www.thisdot.co" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">This Dot Labs公式サイト</a> | <a href="https://www.thisdot.co/services/technologies/stripe-app" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">Stripe App開発サービス</a></p><p>アプリ開発エージェンシーの「This Dot Labs」も今回私が注目した企業の一つです。彼らは Stripe Apps を複数リリースしており、Stripe のエコシステム内での収益化へ積極的に取り組んでいる企業の1つといえそうです。</p><p>2022年に登場した「Stripe Apps」は、Stripe ダッシュボード内に直接統合できるアプリケーションを開発するプラットフォームです。This Dot Labs はこの分野のパイオニアとして、 Google ドライブとの連携や MailChimp などのサービスを連携するアプリを公開しています。</p><ul><li><a href="https://marketplace.stripe.com/apps/data-exporter-for-google-drive">https://marketplace.stripe.com/apps/data-exporter-for-google-drive</a></li><li><a href="https://marketplace.stripe.com/apps/mailchimp">https://marketplace.stripe.com/apps/mailchimp</a></li></ul><p>Jamstack や NextJS などのモダンなフレームワークにも強い This Dot Labs は、MediaJams のようなプラットフォーム構築の実績も持っています。Stripe エコシステムでの開発を検討している企業は、一度相談してみる価値があるかもしれません。</p><h2 id="h849698c0ef">5. Temporal: オープンソースの決済オーケストレーション</h2><p><a href="https://temporal.io" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">Temporal公式サイト</a> | <a href="https://www.amplifypartners.com/case-studies-collection/build-with-confidence-how-temporals-open-source-programming-helps-you-deliver-reliable-efficient-software" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">企業事例</a></p><p>5番目に紹介するのは「Temporal」です。複雑な決済ワークフローの管理を可能にする、オーケストレーションやワークフローツールをオープンソース &amp; SaaS で提供されています。</p><figure><img src="https://images.microcms-assets.io/assets/673f54f935574821bac7ee65829d6fb5/01f8adffaedd4edf9a279a8beb0ff6cf/IMG_6558.jpg" alt="" width="4028" height="3021"></figure><p>決済処理には、様々なサービスプロバイダ間の連携や、障害発生時のリカバリが欠かせません。Temporal はこの問題に焦点を当てたソリューションだといえます。</p><p>複数の決済サービスプロバイダ(PSP)を組み合わせる際に、オーケストレーターとしてフロー管理などを行えるとのことでした。自前で PSP の組み込みをそれぞれ行うよりも、不整合や障害が発生するリスクを下げてくれそうです。</p><p>Temporal は2023年2月に7500万ドルの資金調達を行い、ユニコーン企業(企業価値10億ドル以上)の地位を維持しています。Netflix、Snap、Comcast などの大手企業がすでに採用し、ミッションクリティカルな支払い処理や金融取引の追跡などに活用されているとのこと。</p><p>気になる点としては、今回の Stripe Sessions 2025 にて Stripe 自身が「Payment Orchestration」サービスを開始したことです。こちらはまだクレジットカード限定だったりと、プレビューリリースではありますが、今後の競争環境がどう変化するかは注視することになりそうです。</p><h2 id="h9f45a65741">6. Salesbricks: 営業主導の B2B 取引をシンプルに</h2><p><a href="https://www.salesbricks.com" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">Salesbricks公式サイト</a> | <a href="https://cpq-integrations.com/cpq/salesbricks/" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">CPQ機能の概要</a></p><p>最後に紹介するのは「Salesbricks」です。営業主導の請求書決済に特化したプラットフォームで、B2B 取引を B2C 並みの手軽さで実現することを目指しています。</p><p>B2B 取引では依然として、契約書のやり取りやワークフロー管理に多くの手間がかかることが一般的です。Salesbricks はこの問題を解決し、特に営業担当者と営業事務の業務効率を大幅に改善する可能性を秘めていると感じました。</p><p>同社のソリューションで特に魅力的だったのは、シンプルな見積もり作成機能です。URL ベースの見積もりで、クリック一つで顧客に送信できます。電子サイン機能も備わっており、面倒な契約プロセスをスムーズに進行させることができるでしょう。さらに、サブスクリプション管理機能により、継続的な収益を効率的に把握・管理できます。CPQ (Configure, Price, Quote) 機能も充実しており、商品構成、価格設定、見積もり作成を一元管理できる点もよくできているなと感じました。</p><p>Salesbricks の特徴は、このすべてのプロセスをシンプルかつ一貫したインターフェースで提供している点です。請求書や契約書のやり取りに時間を取られている営業チームや、この手のフローを提供する国内 SaaS 企業は検討候補またはベンチマークとして注目すべきかもしれません。</p><h2 id="h4a8f2b78ba">ステーブルコインへの熱量も要注目</h2><figure><img src="https://images.microcms-assets.io/assets/673f54f935574821bac7ee65829d6fb5/1612ee81fee147ad9678d69cd7889da9/IMG_6369.jpg" alt="" width="3845" height="3845"></figure><p><a href="https://stripe.com/jp/crypto" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">Stripe暗号資産サービス</a></p><p>今回の Stripe Sessions では、上記の6社以外にも多くの興味深い企業が出展していました。特に印象的だったのは、ステーブルコイン関連のエリアです。</p><p>私自身の専門分野が SaaS や請求処理に偏っているため、今回の記事ではそちらにフォーカスしましたが、Stripe が暗号資産分野へ積極的に投資していることは注目に値します。法定通貨に価値が連動するステーブルコインは、従来の決済システムと暗号資産の架け橋となる可能性を秘めているようです。</p><h2 id="h19593b91bd">まとめ: SaaS・決済の未来が見えた Stripe Sessions ブース</h2><p>今回の Stripe Sessions ブースで紹介されたサービスからは、SaaS と決済処理の分野で起きている大きな変化を感じることができました。</p><p>Clerk が示すように、これまで別々だった認証と課金の機能が一体化する傾向が見られます。Stigg の事例からは、複雑な料金体系を簡単に管理できる基盤の重要性が浮き彫りになりました。Amazon Pay やステーブルコインのように人気の決済手段がこれからも Stripe と統合されているだろうということにも期待がもてます。</p><p>また、This Dot Labs のような専門企業の台頭は、Stripe エコシステムが着実に拡大していることを示しています。一方、Temporal が代表するように、ミッションクリティカルな処理への信頼性向上も大きなトレンドでしょう。Salesbricks が目指すシンプルで効率的な営業プロセスは、B2B 取引の効率化という大きな流れの一部と言えます。</p><p>共通しているかなと感じたことは、「顧客のどんな課題を解決するか」にフォーカスしている企業が多いことです。自分たちが遭遇した悩みから始まっているケースもあれば、顧客との対話において発見したというものもあるんだろうなとブースをまわっていて感じました。 Stripe 自身も、別のサービスを立ち上げようとした中で気づいた困難なこと(決済)を解決するという出自をもっています。</p><p>そういった意味では、新しい事業を企画する上で、まず「あなたや自社で悩んでいることは何か?」を問い直すことから始めるべきかもしれません。</p>

岡本 秀高

開発者