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Category: テクノロジー

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認証とサブスク決済:請求モデルに合致したデータ連携を設計しよう

<p>SaaS開発において、決済機能は特殊な位置にあります。基本機能とは直接関係なく、なくてもコア機能自体は動かせるため、「リソース最適化」の名目で組み込みを後回しにしがちです。「いざとなれば、別で請求書を出せばいい」という考えもよく聞かれます。</p><p>しかし、この考え方には大きな落とし穴があります。決済がないアプリは動くかもしれませんが、お金を生まないなら「会社の商品」ではありません。そして後から決済を組み込もうとすると、以下のような問題に直面します。</p><ul><li>プランごとの権限設定をどう実装するのか</li><li>契約情報はどこから取得するのか </li><li>追加のDBやデータモデルが必要になる</li><li>プラン変更の仕組みをどう構築するのか</li></ul><p><strong>重要なのは、実装はしなくとも決済を見据えた設計を心がけることです。</strong></p><h2 id="h6513b34e33">ありがちなハマりどころと考慮漏れ</h2><h3 id="h3e22eda184">契約主体の考慮漏れ</h3><p>ユーザーごと契約でリリースしたものの、見込み客から「法人契約が必要」と言われるケースです。個人向けに設計されたシステムを組織向けに拡張するのは、想像以上に困難な作業となります。</p><h3 id="heb2eb654d7">権限管理の考慮漏れ</h3><p>プランベースで権限管理を実装していたところ、大口顧客から個別のカスタム契約相談があるケース。標準プランでは対応できない要件が発生すると、システム全体の見直しが必要になることがあります。</p><p>決済では、顧客の商習慣や契約体系に応じたデータモデルや設計が必要となります。「担当者退職したので、契約者と決済内容をこのアカウントに移して」といった運用面での要求も珍しくありません。</p><h2 id="h914d158cc5">B2Bの取引・契約は開発者にとって複雑すぎる</h2><p>B2B SaaSで押さえておきたい要件として、以下の2つが特に重要です。</p><h3 id="hfeb6d78b4b">1. ユーザーと契約の分離</h3><p><strong>組織(Organization)の概念</strong></p><p>- ユーザーDBとは別のテーブルで管理</p><p>- サブスクや決済は組織に対して紐づける</p><p>- 個人の退職や異動に左右されない契約管理</p><h3 id="h331d8f56ce">2. 権限を独立管理 </h3><p><strong>Feature Flagの活用</strong></p><p>- プランと権限を別で管理</p><p>- 個別の権限付与に対応可能</p><p>- マーケティングや営業戦略に柔軟に対応</p><h2 id="h2590bfe44d">解決策としてのソリューション</h2><h3 id="hd86a9f3e32">Clerk Organization</h3><p>Clerk OrganizationはIDaaSのprebuilt組織機能として提供されています:</p><p>- ユーザーと別に組織管理機能を提供</p><p>- IDaaSに統合されていることで、DB設計の複雑さを回避</p><p>- <code>&lt;OrganizationProfile /&gt;</code> のような組み込み済みUIコンポーネント</p><pre><code>const { has } = await auth() const canAccessPremium = has({ plan: &apos;pro&apos; }) const isAdmin = has({ role: &apos;org:admin&apos; })</code></pre><h3 id="h458279e3f5"> <a href="http://Stigg.io">Stigg.io</a></h3><p><a href="http://Stigg.io">Stigg.io</a>は決済&amp;Entitlement SaaSとして以下の特徴があります。</p><p>- 契約やプランに対する権限の管理に特化</p><p>- APIやダッシュボードも提供 </p><p>- Stripeなどとも連携可能</p><pre><code>const entitlements = { // feature gate entitlement &apos;advanced-dashboards&apos;: {}, // configuration entitlement &apos;data-retention-days&apos;: { value: 14, }, // usage quota/limit entitlement &apos;file-storage-mb&apos;: { usage: 128, limit: 1024, }, }</code></pre><h2 id="h3e771ee65c">価格は変わる。絶対に</h2><p>AWS Kiro(AIエディタ)の価格変更のように、どんな大企業でも価格は二転三転させます。価格変更は避けられない現実として、システム設計時から考慮する必要があります。</p><h3 id="h07bd50b7b0">Stripe Subscription Schedule APIなどで価格改定に備える</h3><pre><code>const subscriptionSchedule = await stripe.subscriptionSchedules.create({ customer: &apos;cus_NcI8FsMbh0eFs&apos;, start_date: 1787130418, end_behavior: &apos;release&apos;, phases: [{ items: [{ price: &apos;price_1Mr3YcLkdIwHu7ixYOj2&apos;, quantity: 1, }], iterations: 12, }], })</code></pre><p>将来の価格変更に対応できる柔軟な設計を心がけることが重要です。</p><h2 id="h846d15e637">B2Cならもっとシンプルにできる?</h2><p>B2Cであっても、組織概念が必要になるケースがあります:</p><p><strong>家族契約のケース例</strong></p><p>- 知育アプリやサービス</p><p>- 見守りサービス </p><p>- 回線契約や施設利用など</p><p>「ユーザーはどんな契約をするだろうか?」を企画調査フェーズで必ず行うことが重要です。個人向けアプリでも、実際の利用形態を想定した設計が必要になります。</p><h2 id="h50a734545d">B2B SaaSは商習慣も重要なドメイン</h2><p>以下の3つのポイントを押さえることが重要です:</p><p>1. <strong>契約主体が個人か組織(法人)かは必ずチェック</strong></p><p>2. <strong>契約主体に合わせてユーザーDBと決済データなどの連携を設計すべし</strong> </p><p>3. <strong>マーケティングや営業戦略を踏まえると、プランと権限も別で管理することを推奨</strong></p><h2 id="h1d4713b59a">まとめ:ログインの先にある複雑さ</h2><p>認証とサブスクリプション決済の連携において、以下の点を理解しておくことが重要です。</p><p><strong>ログインユーザーと契約者/主体が常に同一人物とは限らない</strong></p><p>- 組織内の複数ユーザー</p><p>- 家族契約での利用者と契約者の違い</p><p>- 管理者の退職や交代への対応</p><p><strong>ユーザーとプランだけでなく、権限と組織についても設計を行おう</strong></p><p>- Feature Flagによる柔軟な権限管理</p><p>- 組織レベルでの契約管理</p><p>- カスタム要件への対応力</p><p><strong>設計・調査フェーズで「どう契約して、使われるか」も考慮しよう</strong></p><p>- 商習慣の理解</p><p>- 契約形態の多様性への対応</p><p>- 将来の価格変更への備え</p><p>認証の先にある複雑さを理解し、ビジネスの成長に合わせて拡張可能な設計を心がけることで、持続的な成長を支える技術基盤を構築できるでしょう。</p><p></p><div style="left: 0; width: 100%; height: 0; position: relative; padding-bottom: 56.2903%;"><iframe src="https://www.docswell.com/slide/Z37NVP/embed" style="top: 0; left: 0; width: 100%; height: 100%; position: absolute; border: 0;" allowfullscreen></iframe></div>

岡本 秀高

開発者

Stripeワークフローを使ったBacklog課題自動登録システムの構築

<p>決済システムを運用していると、決済エラーや課金失敗の通知を適切に管理することが重要な課題となります。これまでWebhookを使ったカスタム開発が一般的でしたが、Stripeから公開プレビューとしてリリースされたワークフロー機能を使えば、ノーコードで通知システムを構築できるようになりました。</p><p>今回は、Stripe ワークフローとBacklogの「メールによる課題登録」機能を組み合わせて、決済エラーを自動的にプロジェクト管理ツールに登録する仕組みを作ってみます。</p><h2 id="hf88f72e74b">Stripe ワークフローの概要</h2><p>Stripe ワークフローは、Stripeダッシュボード上でビジュアルビルダーを使ってタスクの自動化やカスタムフローを作成できる機能です。現在は公開プレビュー版として提供されており、コードを書くことなく複数ステップのプロセスを構築できます。</p><p>各ワークフローはトリガーとなるAPIイベントから始まり、条件ロジックを使った分岐処理や、複数のアクションを組み合わせた処理フローを作成できます。決済エラーが発生した時、特定の条件を満たした顧客に対してのみ処理を実行する、といった細かい制御も可能です。</p><p>特に便利なのが「Email team member」アクションで、ダッシュボードにアクセスできるユーザーに対してメール通知を送信できます。このメール機能を活用して、外部システムとの連携を実現していきます。</p><figure><img src="https://images.microcms-assets.io/assets/673f54f935574821bac7ee65829d6fb5/5d7da5727c1f4aa08822f99093dc37d4/%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%83%E3%83%88%202025-09-16%2015.16.02.png" alt="" width="970" height="309"></figure><h2 id="h1b071028e8">Backlogのメール課題登録機能</h2><p>Backlogには「メールによる課題登録」という機能があります。プロジェクト設定のインテグレーション画面から設定でき、専用のメールアドレスが発行されます。</p><p>このアドレスにメールを送信すると、件名がタスクタイトル、本文がタスク内容として自動的に課題が登録される仕組みです。</p><p></p><figure><img src="https://images.microcms-assets.io/assets/673f54f935574821bac7ee65829d6fb5/ec4bd198aef24ae3a0c9e5eedd7c488e/%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%83%E3%83%88%202025-09-16%2015.11.58.png" alt="" width="1152" height="164"></figure><p>この機能を使えば、Stripeワークフローからの通知メールを直接Backlogの課題として取り込むことができます。</p><h2 id="h2661198b93">実装手順</h2><h3 id="h0afaa7d2d3">Backlog側の設定</h3><p>まず、Backlogで課題登録用のメールアドレスを発行します。プロジェクト設定画面から「インテグレーション」→「メールによる課題登録」を選択し、設定を有効化します。</p><figure><img src="https://images.microcms-assets.io/assets/673f54f935574821bac7ee65829d6fb5/6bb195c58bbe4807bba991247e0826d7/%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%83%E3%83%88%202025-09-16%2015.11.54.png" alt="" width="2164" height="982"></figure><p>ここで発行されるメールアドレスをメモしておきます。</p><h3 id="h1a76888d04">Stripe側でのメールアドレス登録</h3><p>次に、Stripeのダッシュボードでチームメンバーとして、先ほどBacklogで発行したメールアドレスを登録します。新しいユーザーとして招待する形になり、確認メールがBacklogに課題として登録されるため、そこから確認リンクをクリックして登録を完了させます。</p><figure><img src="https://images.microcms-assets.io/assets/673f54f935574821bac7ee65829d6fb5/bc9e0f1aeb464127914c56b20e34d56d/%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%83%E3%83%88%202025-09-16%2015.12.50.png" alt="" width="1626" height="652"></figure><p>この際、適切な権限レベルを設定することが重要です。決済情報への過度なアクセス権限は与えない方が安全です。</p><h3 id="h677fed5eea">ワークフローの作成</h3><p>Stripeダッシュボードのワークフロー画面で新しいフローを作成します。トリガーとして適切なイベントを選択します。請求書の決済エラーであれば「Invoice payment failed」を選択するのが適切でしょう。</p><p></p><figure><img src="https://images.microcms-assets.io/assets/673f54f935574821bac7ee65829d6fb5/901e6785ce8848e295fb1318691866f3/%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%83%E3%83%88%202025-09-16%2015.17.48.png" alt="" width="741" height="272"></figure><p>トリガー選択後、「Add action」から「Email team member」を選択し、先ほど登録したBacklogのメールアドレスを指定します。</p><p></p><figure><img src="https://images.microcms-assets.io/assets/673f54f935574821bac7ee65829d6fb5/cfba951763654423a85410ef0bc9f943/%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%83%E3%83%88%202025-09-16%2015.18.50.png" alt="" width="433" height="325"></figure><h3 id="h8345744506">データの収集と通知内容の設定</h3><p>単純にエラーが発生したことを通知するだけでは実用的ではありません。「Append data」機能を使って、関連する情報を収集します。</p><p>顧客情報であれば「Customer ID」、請求書の詳細であれば「Invoice ID」、サブスクリプション関連であれば「Invoice Subscription ID」、決済試行回数なら「Invoice Attempt count」といったデータを追加できます。これらの情報がメール本文に含まれ、Backlogの課題内容として記録されます。</p><figure><img src="https://images.microcms-assets.io/assets/673f54f935574821bac7ee65829d6fb5/ec2369c34199485a95e86f4bf3d38b09/%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%83%E3%83%88%202025-09-16%2015.17.11.png" alt="" width="420" height="333"></figure><h3 id="he4aa62006e">条件分岐の設定</h3><p>すべてのエラーを通知すると課題が増えすぎる可能性があります。「Add condition」を使って、特定の条件を満たした場合のみ通知するよう設定できます。</p><p></p><figure><img src="https://images.microcms-assets.io/assets/673f54f935574821bac7ee65829d6fb5/65b453802fd7438aa0b54e396515582d/%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%83%E3%83%88%202025-09-16%2015.23.10.png" alt="" width="1369" height="517"></figure><p>例えば、決済リトライが2回目の時のみ通知する、リトライ回数が4回に達した時に緊急度の高い通知を送る、といった細かい制御が可能です。条件は「Attempt count is equal to 2」のような形で設定し、複数の条件をOR条件で組み合わせることもできます。</p><h2 id="hac96eb8127">現在の制限事項と将来の改善</h2><p>2025/09時点でのワークフロー機能には制限があります。最も大きな制約は、配列データの処理ができないことです。</p><p>請求内容の詳細や、サブスクリプションの契約データなど、オブジェクトの配列として格納されているデータをループ処理して通知内容に含めることができません。これは開発ロードマップに含まれているため、将来的には改善される見込みです。</p><p>現在この制約により、通知内容はテキストメールとして受信する内容と同程度の情報に留まり、構造化された詳細データの処理には限界があります。より高度な処理が必要な場合は、従来のWebhook + Lambda/Cloud Runといった開発アプローチが必要になるでしょう。</p><h2 id="ha214098e44">まとめ</h2><p>Stripeワークフローを使った通知システムは、従来のWebhook開発と比べて圧倒的に簡単に構築できます。ノーコードでありながら条件分岐も可能で、実用的なレベルの自動化が実現できました。</p><p>ただし、現時点では配列データの処理に制限があるため、複雑なデータ処理が必要な場合は従来の開発手法との使い分けが重要です。</p><p>Stripeの機能拡張は活発に行われており、この制限も近い将来解消される可能性が高いです。まずはシンプルな通知システムから始めて、機能拡張に合わせて段階的に高度化していくアプローチが現実的でしょう。</p><p>決済システムの運用において、エラー通知の自動化は重要な要素です。開発コストを抑えながら実用的な仕組みを構築したい場合、Stripeワークフローは有力な選択肢になりそうです。</p>

岡本 秀高

開発者

日本最速で Stripe Terminal の話をするイベントに参加してきました

<p>2025/09に開催されたStripe Tour Tokyoにて、ついにStripeが提供するオフライン決済機能である Stripe Terminal の日本上陸がアナウンスされました。</p><p>それを受けて開催されたイベント「<a href="https://nishinomiya.connpass.com/event/368493/" target="_blank" rel="noopener noreferrer">国内最速。日本対応したStripe Terminalをさわって学ぼう!</a>」に参加してきました。</p><h2 id="h8ab40bfe45">主催者は、Stripe Capacitorプラグイン開発者</h2><p>このイベントは、西宮でCapacitorプラグインを複数開発されている<a href="https://www.rdlabo.jp/" target="_blank" rel="noopener noreferrer">榊原さん</a>によって企画・開催されました。</p><p>榊原さんは、CapacitorというJavaScriptで開発したアプリをiOS / Androidむけにコンパイルできる OSS の日本語化や Stripe プラグインの開発に関われている方で、Capacitor Stripeプラグインに対する Stripe の OSS Sponsorship も受けられている方です。</p><div class="iframely-embed"><div class="iframely-responsive" style="height: 140px; padding-bottom: 0;"><a href="https://stripe.capacitorjs.jp/" data-iframely-url="https://cdn.iframe.ly/api/iframe?url=https%3A%2F%2Fstripe.capacitorjs.jp%2F&amp;key=c271a3ec77ff4aa44d5948170dd74161"></a></div></div><script async src="https://cdn.iframe.ly/embed.js" charset="utf-8"></script><h2 id="hac4a45e268">Terminalデバイスを広げながらのミニイベント</h2><p>イベントでは、アナウンスされたばかりの Stripe Terminal端末などを実際に動かしたり触ったりしながら、実装時の注意点やユースケースについて紹介・ディスカッションがありました。</p><figure><img src="https://images.microcms-assets.io/assets/673f54f935574821bac7ee65829d6fb5/776ec709989142c19bc3376a8b5b7cf2/IMG_7374%202.jpg" alt="" width="3845" height="2344"></figure><p>特にプラグイン開発などで実際にTerminal端末を触ったことのある人ならではの知見だなと感じたのは、「<a href="https://docs.stripe.com/terminal/payments/connect-reader?reader-type=bluetooth#update-reader" target="_blank" rel="noopener noreferrer">Terminal端末のOS更新</a>」についてのトピックでした。</p><p>Androidをベースにした端末などがリリースされていますが、OSアップデートをどのタイミングで、どうやって実行するかなどの制御が端末運用におけるハマりどころになるかもしれないとのことで、Terminal SDKを利用した更新制御などをアプリに組み込む必要があるかもしれないそうです。</p><p>ポップアップストアやハウスクリーニングなどの訪問系サービスなどで不定期に端末を利用する場合、決済をこれから行うという肝心な時に端末更新処理で5-15分待たされる・・・のようなことが起きないように、端末管理を行う必要があるそうです。</p><p>ちなみにStripeダッシュボードにも、端末更新などによる再起動時間を制御する設定項目がありました。</p><figure><img src="https://images.microcms-assets.io/assets/673f54f935574821bac7ee65829d6fb5/b8c2a2a519cd4de8a18b64655a52186c/%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%83%E3%83%88%202025-09-09%200.03.50.png" alt="" width="734" height="596"></figure><p>この辺りの制御などを考えると、すこし割高な印象がありますがインターネット接続に対応しているS700シリーズの購入や、Tap To Payに対応したアプリの開発などを検討する方が、中小企業などでは効率的かも・・・?と思いました。</p>

岡本 秀高

開発者

[Stripe Sessions レポート] AIエージェントと EC の未来と課題について

<p>Stripe Sessions 2025 では、AI エージェントの利活用や「エージェントコーマス」に関するディスカッション(ブレイクアウトセッション)が複数ありました。その中でも、Browserbase や /dev/agents の CEO・ Rye の Head of Ops そして Stripe の Product Lead が参加されたセッション「<a href="https://stripe.com/jp/sessions/2025/ai-agents-reshaping-the-way-we-buy-and-sell" target="_blank" rel="noopener noreferrer">AI agents: Reshaping the way we buy and sell</a>」について、この記事では簡単に紹介します。</p><h2 id="h53f73f8eb7"> EC サイトや消費者ニーズの現状</h2><p>このセッションでは、AIエージェントが消費者行動とeコマースの未来をどのように形作るか、企業はこれらの変化にどう対応すべきか、そして実践するためのネクストステップについてディスカッションがありました。</p><p>まず現在地点の確認として、消費者が AI をどのように活用しているかや、オンラインでの購入プロセスについて話題になりました。 日々最適化や研究が進められている EC の購入プロセスですが、まだまだ消費者が自身で考えたり行動したりするステップが残っています。パネリストは具体例として掃除機の購入プロセスを紹介されていました。新しい掃除機を購入するとなった場合、まずどの掃除機を買うべきかを比較調査します。その後候補に挙がった掃除機のうち、自身が思う適切な価格で購入できる商品やストアを探しにいきます。 EC サイトの購入フローに消費者がたどり着くまでの時点で、すでに彼らはいくつかのアクションや判断を求められています。</p><p>また、EC 事業者の視点でも、自動化 bot や AI エージェントに対する見方を変える必要性に迫られているそうです。これまでウェブサイトを訪れる bot といえば、検索サイトのインデックスか、それとも不正利用などを試みる悪意のあるシステムのどちらかでした。しかし現在では様々な AI エージェントがそれぞれに指示を出した消費者の疑問に応えようとして、 bot としてサイトにアクセスしてきます。そのため bot アクセスを一律に遮断するなどの不正対策を行なっている場合、今後増加するであろう AI エージェントによる商品検索などのシナリオから、自社の EC サイトが除外されてしまう可能性が生まれています。このように企業が bot やエージェントをどのように対応し、受け入れていくのかを考える必要に迫られています。</p><h2 id="h873478f688">EC サイトにおける AI エージェントの可能性と課題</h2><p>商品の選択や最適価格の調査など、消費者がオンラインで買い物をする際に行なっている様々なタスクを、 AI エージェントはどのように効率化してくれるでしょうか? Sessions 2025 の Product Keynote でデモがあったように、すでに AI エージェントを使って商品の検索や注文を試みる仕組みやデモなどは登場しつつあります。</p><div style="left: 0; width: 100%; height: 0; position: relative; padding-bottom: 56.25%;"><iframe src="https://www.youtube.com/embed/bVQwIZYk9UM?rel=0" style="top: 0; left: 0; width: 100%; height: 100%; position: absolute; border: 0;" allowfullscreen scrolling="no" allow="accelerometer *; clipboard-write *; encrypted-media *; gyroscope *; picture-in-picture *; web-share *;"></iframe></div><p>しかし一方でまだまだ課題も残されています。ディスカッションのなかでは、「<strong>人間が自分で行うよりも迅速で楽しい体験を提供する必要がある</strong>」ことが指摘されていました。購入を提案する商品の選択精度はもちろん、処理時間がかかりすぎる場合にも、「自分でやったほうがよい」と消費者が判断してしまうことになります。パネリストはセッションの中で、「人間が自分でやるよりも遅いシステムより悪いものはありません。AIエージェントはユーザーに対して、より楽しく、効率的な体験を提供する必要があるのです」とも話されていました。このような課題を解決できるかが、エージェントコマース普及に向けたキーポイントの1つになりそうです。</p><p>また、ユーザー体験についての可能性と課題についても話題になりました。すべてを AI が実施するのではなく、買い物の中で消費者が楽しみたいと思っている部分や体験については残し、退屈な作業になりがちな部分の自動化にフォーカスする必要があるということです。セッションを聞いていた感想としては、EC における AI エージェントは百貨店の外商のような体験を提供するようになるのかなと思いました。顧客のことをよく理解し、忘れているであることや繰り返し実行しているタスクなどを裏側で自動的に実行する。それによって買い物というアクティビティを 100 % 楽しめるような体験を提供することが理想系に感じます。</p><h2 id="hd19e63d70c">AI によって変わる買い物体験</h2><p>続いてユーザー体験や買い物のあり方が今後どのように変わるかのディスカッションに移りました。</p><h3 id="h0b60fb45d9">AI ネイティブなストアが生まれる可能性</h3><p>まず話題になったのは「クラウドキッチン」(実店舗を持たず、デリバリーのみに特化したレストラン)の EC 版が生まれる可能性についてです。実店舗やウェブサイトを持たず、AIエージェント向けのインターフェースのみを提供する新種の小売業者が登場するかもしれません。現在ですと、 MCP サーバーのみ提供するようなイメージでしょうか。このような新しい注文体験やモールなども、この後登場し、買い物の体験が変わってくる可能性もありそうです。</p><h3 id="h21954e3a4a">パーソナライゼーションの強化</h3><p>また、パーソナライズについての話題もありました。現在の検索エンジンでは「無限の検索結果の1ページ目」が表示されるだけですが、AIエージェントはユーザーの好みや過去の行動に基づいて高度にパーソナライズされた提案を行うことができます。これによって商品を効率的に探すことがかのうになり、顧客満足度が大幅に向上する可能性があります。ユーザーにとっては、より自分に合った商品との出会いが増えることになります。</p><h3 id="hde22313f52">買い忘れの予防によるカゴ落ち率改善</h3><p>もう一つの話題は、「買い忘れ」についてでした。「そろそろ買おうと思っていたけど、なんだかんだ買わずに過ごしてしまっている」ような体験は誰しもあると思います。日用品の買い物もですが、誕生日や祝い事のギフトを買い忘れて慌てるということも経験したことはあるのではないでしょうか。このような買い忘れ問題についても、 AI エージェントがお知らせするだけでなく、商品の選定や提案・購入まで行ってくれるようになることで、人間にありがちなうっかりミスを減らせるのではないかという話題がありました。</p><h3 id="hb4baac47d0">ユーザーの制御感と便利さのトレードオフ</h3><p>しかし一方ですべてを AI エージェントに任せることへの疑問も提示されました。ユーザーは買い物における全てのステップを煩雑に感じたり、AI に任せたいと考えているのかについて、事前に検証する必要があります。例えば候補の絞り込みまでは AI が行い、最終的にどの商品にするかの決断や色やオプションなどの選択は人間が行うようなフローも考えられます。このステップをギフトや嗜好品などで自動化すると、却って顧客の買い物体験を損なうのではないかという指摘がありました。反面、オフィスの消耗品などであれば、あらかじめ設定した予算枠の範囲内で必要な量だけを選択して注文できる完全自律型の AI エージェントは非常に重宝されるでしょう。このように、 AI が自動化する範囲と人間への判断を求める部分とのバランスをストアやユースケースごとに見極めていくことが重要だということです。</p><p>また、購入フローを自動化した場合には、「顧客はどのような操作を取り消しできるか」についても設計や説明する必要があるという指摘もありました。顧客が望んでいないものを購入し、それが取り消しできないという体験は、エージェントに対してだけでなく、ストアやブランドに対しても悪印象を持たれてしまいます。高額な決済などの重要な決断についてはユーザーへの確認を求める、エージェントが自律的に購入まで行うかどうかや、自動購入の閾値を設定できるような仕組みなども今後はうまれてくる可能性があります。このような仕組みを用意することで、エージェントによる意図しない購入から生まれる大量の返品といったストア側のリスクも軽減できます。</p><p>先のディスカッションであった、「<strong>人間が自分で行うよりも迅速で楽しい体験を提供する必要がある</strong>」を念頭に置いたユーザー体験の設計から行うことが、もしかするとエージェントコマースを成功させる鍵になるかもしれません。そしてこのような設計を行うには、消費者がいる場所で消費者と会って会話する、顧客理解の必要性が高まってきているという話にも広がりました。</p><h2 id="h6fbe578c33">エージェントコマースのユースケース</h2><p>この他、エージェントコマースの実用的なユースケースについてのディスカッションもありました。</p><p><strong>エージェントコマースによる、新しい購入体験</strong></p><p>まず紹介されたのは、AIエージェントによる予算管理です。「1日にX円まで使用可能で、予算オーバーの場合はテキストで連絡」といったルールや条件を設定することで、ユーザーは支出を気にせず買い物を楽しめるようになります。これはオフィスの消耗品や家庭での日用品などで重宝される可能性が高そうです。また、発展系として予算だけでなく消費量や残高をチェックすることで定期的な再注文までも自動化する方法についても言及がありました。このあたりは<a href="https://developer.amazon.com/ja/docs/dash/ja-dash-replenishment-overview.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer"> Amazon の Dash Replenishment </a>などが、先行事例やベンチマークになるかもしれません。</p><p><strong>注文処理フローの自動化</strong></p><p>さらに、カスタマーサポートから返金処理まで、EC における注文や顧客体験フローでAIエージェントが担うシステムについても提案がありました。<a href="https://fin.ai/" target="_blank" rel="noopener noreferrer">Intercom の Fin </a>などはすでに AI によるキャンセル・返金などもサポートしており、業務改善の一環や、 AI エージェントを導入する第一歩目としても注目が集まりそうです。</p><h2 id="h2ec2fcd3d3"><strong>エージェントコマース時代に向けた next action</strong></h2><p>最後に、現実的な次のステップについてのディスカッションがありました。ストア側では、先ほど提案のあったようなユースケースについて、 PoC レベルでの実証実験や新しい販売チャネルとしての検討を進めることが提案されました。また、開発者に対しては、 <a href="https://docs.stripe.com/agents?locale=ja-JP#online-purchasing" target="_blank" rel="noopener noreferrer">Stripe が開発者プレビューで提供する新しい購入フロー</a>をテストしてみるなど、社内でエージェントによるコマース体験について話し合うための実物を作ってみることがお勧めされていました。</p><p>また、遠い将来の話として、 AI が人間と同じかそれ以上のことをできるようになった世界についての話もありました。そのような世界になった場合、ウェブサイトやアプリの操作性は全く新しいものに変わり、それによってウェブは再び「人間のためのもの」になるかもしれないとのことです。</p><p>個人的な感想ですが、エージェント的な振る舞いを簡単に試せる MCP を利用して、 PoC やデモを作ってみることが、エージェントコマースの未来を覗き見る簡単な方法かもしれません。</p><h2 id="ha214098e44">まとめ</h2><p>このセッションでは、AI や AI エージェントの発達と普及によって、 EC サイトでの体験やストア側のワークフロー・そしてオンラインでの購入体験そのものがどのように変わっていくかのディスカッションが行われました。すべてを AI にまかせるのではなく、「ユーザーはストアでどのような体験を楽しみたいか?」を意識すべきという点は、開発者としてハッとさせられた点です。どうしても新しい技術やツールなどを学ぶ・手に入れると、すべてのものに適用してみたくなります。しかし自動化や効率化を「顧客が楽しみたいと思っている機会を奪う」ために使うことは、本末転倒です。「 AI をどう使うか。取り入れるか」も重要ですが、「そもそも顧客はなにを楽しみたいと思っていて、なにを煩わしいと思っているか」を理解することを第一に置く必要があるでしょう。</p><p>AI や自動化に関するセッションの中で、最終的に「顧客理解」やそのための顧客との対話の重要性を再確認できたという点も興味深い体験でした。 AI による変革は不可避な流れに感じます。しかし全てのルールが変わり、今までの経験が活かせなくなるというわけではなく、むしろ顧客や事業・プロダクトなどに対する理解がある人がより有利になる世界になるような気がしました。</p><p>「こういうことができたら、もっと喜んでもらえそう」「ここステップ、煩雑だけどどう解消すればいいかわからないなぁ」のような業務の中で感じた小さなモヤモヤを記録して、 AI ならどう解決できるかを試行錯誤する。そんなところからでも、変革がはじまるかもしれませんね。</p><div class="iframely-embed"><div class="iframely-responsive" style="height: 140px; padding-bottom: 0;"><a href="https://stripe.com/jp/sessions/2025/ai-agents-reshaping-the-way-we-buy-and-sell" data-iframely-url="https://cdn.iframe.ly/api/iframe?url=https%3A%2F%2Fstripe.com%2Fjp%2Fsessions%2F2025%2Fai-agents-reshaping-the-way-we-buy-and-sell&amp;key=c271a3ec77ff4aa44d5948170dd74161"></a></div></div><script async src="https://cdn.iframe.ly/embed.js" charset="utf-8"></script>

岡本 秀高

開発者

Stripe Sessions 2025 のスポンサーブースで気になったサービスを勝手に6つ紹介します

<p>BizDev &amp; RevTech Dev の岡本秀 ( <a href="https://twitter.com/hidetaka_dev" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">@hidetaka_dev</a>)です。今回は Stripe Sessions 2025 参加レポートとして、 スポンサーブースエリアの気になった展示企業・サービスについて紹介します。</p><p>ユニークな開発支援サービスだけでなく、日本ではあまり見ることのないソリューションやビジネスモデルなどもありましたので、ぜひユーザーとしてだけでなく日本での新規事業企画の参考にもしてください!</p><h2 id="h3833a3b809">1. Clerk: 認証と課金を一体化した新プロダクトが登場</h2><figure><img src="https://images.microcms-assets.io/assets/673f54f935574821bac7ee65829d6fb5/561d6873872444fab2ed11380e2ca46f/IMG_6350.jpg" alt="" width="5712" height="4284"></figure><p><a href="https://clerk.com" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">Clerk公式サイト</a> | <a href="https://clerk.com/billing" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">Clerk Billing</a></p><p>最初に紹介するのは、認証系 SaaS の「<a href="https://clerk.com" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">Clerk</a>」です。今回の Stripe Sessions に合わせて、Stripe Billing を活用した統合機能「Clerk Billing」の公開ベータを発表しました。</p><p>これまで認証と課金は別々のサービスで管理することが一般的でした。しかし Clerk の新機能「Clerk Billing」では、これらを一体化します。事前に Clerk ダッシュボードで料金プランや機能の設定を済ませておくと、アプリケーション側ではただ <code>&lt;PricingTable /&gt;</code> などのコンポーネントを配置するだけで、料金表やサブスク管理などのUIと機能実装が実現できます。</p><p>Next.js を利用したアプリにこの Clerk Billing を組み込む方法をブログ記事にまとめています。こちらもぜひ参考にしてください。</p><p><a href="https://wp-kyoto.net/get-started-clerk-billing-with-nextjs" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">Next.jsとClerk Billingを使用したサブスクリプション管理の実装方法</a></p><p>私が Clerk に注目する理由の一つが、開発者体験を重視している点です。公式サイトによれば、多要素認証はもちろん、20種類以上のソーシャルログイン対応、使い捨てメールドメインのブロックなどの詐欺防止機能も備えています。実装面でも React、Next.js、Remix などのモダンフレームワーク向けに最適化された SDK と UI コンポーネントを提供してるのもよいなと思っています。</p><p>Stripe との関係についても面白いことになっています。今回のネイティブ連携だけでなく2024年1月に Clerk は Stripe から3000万ドルの投資を受け、戦略的パートナーシップを形成しています。 Stripe をサービスに組み込む際の認証基盤として、今後も強力なインテグレーションが登場し続けるのではないかと個人的にはとても期待しています。</p><p>料金についても、最初の10,000人の月間アクティブユーザーまでは無料で利用可能なので、小〜中規模のプロジェクトであればほぼ無料で使える・試せるのもいいですね。</p><h2 id="h8f2d5a28dc">2. Stigg: 料金モデルや機能フラグの管理をよりシンプルに</h2><p><a href="https://www.stigg.io" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">Stigg公式サイト</a> | <a href="https://www.stigg.io/" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">エンタイトルメント管理について</a></p><p>次に紹介するのは「Stigg」です。料金モデルの複雑化と機能フラグの管理という、SaaS 開発者が直面する2つの大きな課題を解決するサービスで、今回ブースにてスタッフと一番話し込んだサービスです。</p><figure><img src="https://images.microcms-assets.io/assets/673f54f935574821bac7ee65829d6fb5/07ceac1ff7d54cd6a60ee8ea2ae924c5/IMG_6557.jpg" alt="" width="5706" height="4280"></figure><p>多くの SaaS 企業は成長とともに料金プランが複雑化し、どの機能をどのプランに含めるかの管理が次第に複雑になりがちです。機能フラグを管理するデータベースを構築したり、 Stripe 上に metadata を駆使して構築するなどの方法があるでしょう。Stigg はこの問題を「エンタイトルメント管理」という概念で解決しようとしています。</p><p>Stigg は柔軟性に富んでおり、すでに Stripe Billing を使っているサービスに後から追加することも可能です。もちろん Stigg 単体で決済機能を実装することもできます。開発者が機能単位で細かくアクセス制御を行える点も魅力的でしょう。一時的に特定の機能を一部ユーザーへ限定提供するなどの制御もおこなえるとのことでして、新機能の先行リリースやベータテストなどにも使えそうです。</p><p>2024年12月には1750万ドル(約25億円)の資金調達に成功し、Miro や AI21 Labs などの企業がすでに採用しているとのこと。特に AI 機能など、新しい価格モデルを迅速に導入したい企業にとって強力なツールになるかもしれません。</p><h2 id="h3bc0fa8b35">4. Amazon Pay: 来るか Stripe 連携の全世界対応</h2><figure><img src="https://images.microcms-assets.io/assets/673f54f935574821bac7ee65829d6fb5/64d2eafc43224cd2a0f9db01daecf322/IMG_6493.jpg" alt="" width="5712" height="4284"></figure><p>個人的にやっぱりあるよねーと思ったブースの1つが Amazon です。実はアメリカの Stripe ユーザーは、 Stripe で実装した決済フローにワンクリックで Amazon Pay を導入することができます。</p><p><a href="https://stripe.com/jp/payment-method/amazon-pay" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">Amazon Pay による決済を受け付ける | Stripe</a></p><p>まだアメリカのみで利用できる機能なのですが、日本や世界中の Stripe アカウントで利用できるようになれば、EC 方面での Stripe の存在感がさらに増しそうです。</p><h2 id="h7bcbf04dbd">4. This Dot Labs: Stripe Apps エコシステムを活用した新しいビジネスの形</h2><p><a href="https://www.thisdot.co" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">This Dot Labs公式サイト</a> | <a href="https://www.thisdot.co/services/technologies/stripe-app" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">Stripe App開発サービス</a></p><p>アプリ開発エージェンシーの「This Dot Labs」も今回私が注目した企業の一つです。彼らは Stripe Apps を複数リリースしており、Stripe のエコシステム内での収益化へ積極的に取り組んでいる企業の1つといえそうです。</p><p>2022年に登場した「Stripe Apps」は、Stripe ダッシュボード内に直接統合できるアプリケーションを開発するプラットフォームです。This Dot Labs はこの分野のパイオニアとして、 Google ドライブとの連携や MailChimp などのサービスを連携するアプリを公開しています。</p><ul><li><a href="https://marketplace.stripe.com/apps/data-exporter-for-google-drive">https://marketplace.stripe.com/apps/data-exporter-for-google-drive</a></li><li><a href="https://marketplace.stripe.com/apps/mailchimp">https://marketplace.stripe.com/apps/mailchimp</a></li></ul><p>Jamstack や NextJS などのモダンなフレームワークにも強い This Dot Labs は、MediaJams のようなプラットフォーム構築の実績も持っています。Stripe エコシステムでの開発を検討している企業は、一度相談してみる価値があるかもしれません。</p><h2 id="h849698c0ef">5. Temporal: オープンソースの決済オーケストレーション</h2><p><a href="https://temporal.io" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">Temporal公式サイト</a> | <a href="https://www.amplifypartners.com/case-studies-collection/build-with-confidence-how-temporals-open-source-programming-helps-you-deliver-reliable-efficient-software" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">企業事例</a></p><p>5番目に紹介するのは「Temporal」です。複雑な決済ワークフローの管理を可能にする、オーケストレーションやワークフローツールをオープンソース &amp; SaaS で提供されています。</p><figure><img src="https://images.microcms-assets.io/assets/673f54f935574821bac7ee65829d6fb5/01f8adffaedd4edf9a279a8beb0ff6cf/IMG_6558.jpg" alt="" width="4028" height="3021"></figure><p>決済処理には、様々なサービスプロバイダ間の連携や、障害発生時のリカバリが欠かせません。Temporal はこの問題に焦点を当てたソリューションだといえます。</p><p>複数の決済サービスプロバイダ(PSP)を組み合わせる際に、オーケストレーターとしてフロー管理などを行えるとのことでした。自前で PSP の組み込みをそれぞれ行うよりも、不整合や障害が発生するリスクを下げてくれそうです。</p><p>Temporal は2023年2月に7500万ドルの資金調達を行い、ユニコーン企業(企業価値10億ドル以上)の地位を維持しています。Netflix、Snap、Comcast などの大手企業がすでに採用し、ミッションクリティカルな支払い処理や金融取引の追跡などに活用されているとのこと。</p><p>気になる点としては、今回の Stripe Sessions 2025 にて Stripe 自身が「Payment Orchestration」サービスを開始したことです。こちらはまだクレジットカード限定だったりと、プレビューリリースではありますが、今後の競争環境がどう変化するかは注視することになりそうです。</p><h2 id="h9f45a65741">6. Salesbricks: 営業主導の B2B 取引をシンプルに</h2><p><a href="https://www.salesbricks.com" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">Salesbricks公式サイト</a> | <a href="https://cpq-integrations.com/cpq/salesbricks/" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">CPQ機能の概要</a></p><p>最後に紹介するのは「Salesbricks」です。営業主導の請求書決済に特化したプラットフォームで、B2B 取引を B2C 並みの手軽さで実現することを目指しています。</p><p>B2B 取引では依然として、契約書のやり取りやワークフロー管理に多くの手間がかかることが一般的です。Salesbricks はこの問題を解決し、特に営業担当者と営業事務の業務効率を大幅に改善する可能性を秘めていると感じました。</p><p>同社のソリューションで特に魅力的だったのは、シンプルな見積もり作成機能です。URL ベースの見積もりで、クリック一つで顧客に送信できます。電子サイン機能も備わっており、面倒な契約プロセスをスムーズに進行させることができるでしょう。さらに、サブスクリプション管理機能により、継続的な収益を効率的に把握・管理できます。CPQ (Configure, Price, Quote) 機能も充実しており、商品構成、価格設定、見積もり作成を一元管理できる点もよくできているなと感じました。</p><p>Salesbricks の特徴は、このすべてのプロセスをシンプルかつ一貫したインターフェースで提供している点です。請求書や契約書のやり取りに時間を取られている営業チームや、この手のフローを提供する国内 SaaS 企業は検討候補またはベンチマークとして注目すべきかもしれません。</p><h2 id="h4a8f2b78ba">ステーブルコインへの熱量も要注目</h2><figure><img src="https://images.microcms-assets.io/assets/673f54f935574821bac7ee65829d6fb5/1612ee81fee147ad9678d69cd7889da9/IMG_6369.jpg" alt="" width="3845" height="3845"></figure><p><a href="https://stripe.com/jp/crypto" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">Stripe暗号資産サービス</a></p><p>今回の Stripe Sessions では、上記の6社以外にも多くの興味深い企業が出展していました。特に印象的だったのは、ステーブルコイン関連のエリアです。</p><p>私自身の専門分野が SaaS や請求処理に偏っているため、今回の記事ではそちらにフォーカスしましたが、Stripe が暗号資産分野へ積極的に投資していることは注目に値します。法定通貨に価値が連動するステーブルコインは、従来の決済システムと暗号資産の架け橋となる可能性を秘めているようです。</p><h2 id="h19593b91bd">まとめ: SaaS・決済の未来が見えた Stripe Sessions ブース</h2><p>今回の Stripe Sessions ブースで紹介されたサービスからは、SaaS と決済処理の分野で起きている大きな変化を感じることができました。</p><p>Clerk が示すように、これまで別々だった認証と課金の機能が一体化する傾向が見られます。Stigg の事例からは、複雑な料金体系を簡単に管理できる基盤の重要性が浮き彫りになりました。Amazon Pay やステーブルコインのように人気の決済手段がこれからも Stripe と統合されているだろうということにも期待がもてます。</p><p>また、This Dot Labs のような専門企業の台頭は、Stripe エコシステムが着実に拡大していることを示しています。一方、Temporal が代表するように、ミッションクリティカルな処理への信頼性向上も大きなトレンドでしょう。Salesbricks が目指すシンプルで効率的な営業プロセスは、B2B 取引の効率化という大きな流れの一部と言えます。</p><p>共通しているかなと感じたことは、「顧客のどんな課題を解決するか」にフォーカスしている企業が多いことです。自分たちが遭遇した悩みから始まっているケースもあれば、顧客との対話において発見したというものもあるんだろうなとブースをまわっていて感じました。 Stripe 自身も、別のサービスを立ち上げようとした中で気づいた困難なこと(決済)を解決するという出自をもっています。</p><p>そういった意味では、新しい事業を企画する上で、まず「あなたや自社で悩んでいることは何か?」を問い直すことから始めるべきかもしれません。</p>

岡本 秀高

開発者