Stripe Sessions 2025 のスポンサーブースで気になったサービスを勝手に6つ紹介します | RevTech tools for Stripe

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Stripe Sessions 2025 のスポンサーブースで気になったサービスを勝手に6つ紹介します

Stripe Sessions 2025 のスポンサーブースで気になったサービスを勝手に6つ紹介します
公開日: 2025/5/15 / 更新日: 2025/5/18

BizDev & RevTech Dev の岡本秀 ( @hidetaka_dev)です。今回は Stripe Sessions 2025 参加レポートとして、 スポンサーブースエリアの気になった展示企業・サービスについて紹介します。

ユニークな開発支援サービスだけでなく、日本ではあまり見ることのないソリューションやビジネスモデルなどもありましたので、ぜひユーザーとしてだけでなく日本での新規事業企画の参考にもしてください!

1. Clerk: 認証と課金を一体化した新プロダクトが登場

Clerk公式サイト | Clerk Billing

最初に紹介するのは、認証系 SaaS の「Clerk」です。今回の Stripe Sessions に合わせて、Stripe Billing を活用した統合機能「Clerk Billing」の公開ベータを発表しました。

これまで認証と課金は別々のサービスで管理することが一般的でした。しかし Clerk の新機能「Clerk Billing」では、これらを一体化します。事前に Clerk ダッシュボードで料金プランや機能の設定を済ませておくと、アプリケーション側ではただ <PricingTable /> などのコンポーネントを配置するだけで、料金表やサブスク管理などのUIと機能実装が実現できます。

Next.js を利用したアプリにこの Clerk Billing を組み込む方法をブログ記事にまとめています。こちらもぜひ参考にしてください。

Next.jsとClerk Billingを使用したサブスクリプション管理の実装方法

私が Clerk に注目する理由の一つが、開発者体験を重視している点です。公式サイトによれば、多要素認証はもちろん、20種類以上のソーシャルログイン対応、使い捨てメールドメインのブロックなどの詐欺防止機能も備えています。実装面でも React、Next.js、Remix などのモダンフレームワーク向けに最適化された SDK と UI コンポーネントを提供してるのもよいなと思っています。

Stripe との関係についても面白いことになっています。今回のネイティブ連携だけでなく2024年1月に Clerk は Stripe から3000万ドルの投資を受け、戦略的パートナーシップを形成しています。 Stripe をサービスに組み込む際の認証基盤として、今後も強力なインテグレーションが登場し続けるのではないかと個人的にはとても期待しています。

料金についても、最初の10,000人の月間アクティブユーザーまでは無料で利用可能なので、小〜中規模のプロジェクトであればほぼ無料で使える・試せるのもいいですね。

2. Stigg: 料金モデルや機能フラグの管理をよりシンプルに

Stigg公式サイト | エンタイトルメント管理について

次に紹介するのは「Stigg」です。料金モデルの複雑化と機能フラグの管理という、SaaS 開発者が直面する2つの大きな課題を解決するサービスで、今回ブースにてスタッフと一番話し込んだサービスです。

多くの SaaS 企業は成長とともに料金プランが複雑化し、どの機能をどのプランに含めるかの管理が次第に複雑になりがちです。機能フラグを管理するデータベースを構築したり、 Stripe 上に metadata を駆使して構築するなどの方法があるでしょう。Stigg はこの問題を「エンタイトルメント管理」という概念で解決しようとしています。

Stigg は柔軟性に富んでおり、すでに Stripe Billing を使っているサービスに後から追加することも可能です。もちろん Stigg 単体で決済機能を実装することもできます。開発者が機能単位で細かくアクセス制御を行える点も魅力的でしょう。一時的に特定の機能を一部ユーザーへ限定提供するなどの制御もおこなえるとのことでして、新機能の先行リリースやベータテストなどにも使えそうです。

2024年12月には1750万ドル(約25億円)の資金調達に成功し、Miro や AI21 Labs などの企業がすでに採用しているとのこと。特に AI 機能など、新しい価格モデルを迅速に導入したい企業にとって強力なツールになるかもしれません。

4. Amazon Pay: 来るか Stripe 連携の全世界対応

個人的にやっぱりあるよねーと思ったブースの1つが Amazon です。実はアメリカの Stripe ユーザーは、 Stripe で実装した決済フローにワンクリックで Amazon Pay を導入することができます。

Amazon Pay による決済を受け付ける | Stripe

まだアメリカのみで利用できる機能なのですが、日本や世界中の Stripe アカウントで利用できるようになれば、EC 方面での Stripe の存在感がさらに増しそうです。

4. This Dot Labs: Stripe Apps エコシステムを活用した新しいビジネスの形

This Dot Labs公式サイト | Stripe App開発サービス

アプリ開発エージェンシーの「This Dot Labs」も今回私が注目した企業の一つです。彼らは Stripe Apps を複数リリースしており、Stripe のエコシステム内での収益化へ積極的に取り組んでいる企業の1つといえそうです。

2022年に登場した「Stripe Apps」は、Stripe ダッシュボード内に直接統合できるアプリケーションを開発するプラットフォームです。This Dot Labs はこの分野のパイオニアとして、 Google ドライブとの連携や MailChimp などのサービスを連携するアプリを公開しています。

Jamstack や NextJS などのモダンなフレームワークにも強い This Dot Labs は、MediaJams のようなプラットフォーム構築の実績も持っています。Stripe エコシステムでの開発を検討している企業は、一度相談してみる価値があるかもしれません。

5. Temporal: オープンソースの決済オーケストレーション

Temporal公式サイト | 企業事例

5番目に紹介するのは「Temporal」です。複雑な決済ワークフローの管理を可能にする、オーケストレーションやワークフローツールをオープンソース & SaaS で提供されています。

決済処理には、様々なサービスプロバイダ間の連携や、障害発生時のリカバリが欠かせません。Temporal はこの問題に焦点を当てたソリューションだといえます。

複数の決済サービスプロバイダ(PSP)を組み合わせる際に、オーケストレーターとしてフロー管理などを行えるとのことでした。自前で PSP の組み込みをそれぞれ行うよりも、不整合や障害が発生するリスクを下げてくれそうです。

Temporal は2023年2月に7500万ドルの資金調達を行い、ユニコーン企業(企業価値10億ドル以上)の地位を維持しています。Netflix、Snap、Comcast などの大手企業がすでに採用し、ミッションクリティカルな支払い処理や金融取引の追跡などに活用されているとのこと。

気になる点としては、今回の Stripe Sessions 2025 にて Stripe 自身が「Payment Orchestration」サービスを開始したことです。こちらはまだクレジットカード限定だったりと、プレビューリリースではありますが、今後の競争環境がどう変化するかは注視することになりそうです。

6. Salesbricks: 営業主導の B2B 取引をシンプルに

Salesbricks公式サイト | CPQ機能の概要

最後に紹介するのは「Salesbricks」です。営業主導の請求書決済に特化したプラットフォームで、B2B 取引を B2C 並みの手軽さで実現することを目指しています。

B2B 取引では依然として、契約書のやり取りやワークフロー管理に多くの手間がかかることが一般的です。Salesbricks はこの問題を解決し、特に営業担当者と営業事務の業務効率を大幅に改善する可能性を秘めていると感じました。

同社のソリューションで特に魅力的だったのは、シンプルな見積もり作成機能です。URL ベースの見積もりで、クリック一つで顧客に送信できます。電子サイン機能も備わっており、面倒な契約プロセスをスムーズに進行させることができるでしょう。さらに、サブスクリプション管理機能により、継続的な収益を効率的に把握・管理できます。CPQ (Configure, Price, Quote) 機能も充実しており、商品構成、価格設定、見積もり作成を一元管理できる点もよくできているなと感じました。

Salesbricks の特徴は、このすべてのプロセスをシンプルかつ一貫したインターフェースで提供している点です。請求書や契約書のやり取りに時間を取られている営業チームや、この手のフローを提供する国内 SaaS 企業は検討候補またはベンチマークとして注目すべきかもしれません。

ステーブルコインへの熱量も要注目

Stripe暗号資産サービス

今回の Stripe Sessions では、上記の6社以外にも多くの興味深い企業が出展していました。特に印象的だったのは、ステーブルコイン関連のエリアです。

私自身の専門分野が SaaS や請求処理に偏っているため、今回の記事ではそちらにフォーカスしましたが、Stripe が暗号資産分野へ積極的に投資していることは注目に値します。法定通貨に価値が連動するステーブルコインは、従来の決済システムと暗号資産の架け橋となる可能性を秘めているようです。

まとめ: SaaS・決済の未来が見えた Stripe Sessions ブース

今回の Stripe Sessions ブースで紹介されたサービスからは、SaaS と決済処理の分野で起きている大きな変化を感じることができました。

Clerk が示すように、これまで別々だった認証と課金の機能が一体化する傾向が見られます。Stigg の事例からは、複雑な料金体系を簡単に管理できる基盤の重要性が浮き彫りになりました。Amazon Pay やステーブルコインのように人気の決済手段がこれからも Stripe と統合されているだろうということにも期待がもてます。

また、This Dot Labs のような専門企業の台頭は、Stripe エコシステムが着実に拡大していることを示しています。一方、Temporal が代表するように、ミッションクリティカルな処理への信頼性向上も大きなトレンドでしょう。Salesbricks が目指すシンプルで効率的な営業プロセスは、B2B 取引の効率化という大きな流れの一部と言えます。

共通しているかなと感じたことは、「顧客のどんな課題を解決するか」にフォーカスしている企業が多いことです。自分たちが遭遇した悩みから始まっているケースもあれば、顧客との対話において発見したというものもあるんだろうなとブースをまわっていて感じました。 Stripe 自身も、別のサービスを立ち上げようとした中で気づいた困難なこと(決済)を解決するという出自をもっています。

そういった意味では、新しい事業を企画する上で、まず「あなたや自社で悩んでいることは何か?」を問い直すことから始めるべきかもしれません。