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Stripe Sessions 2025 で、チャージバックを AI が自動対応する「Smart Disputes」が発表されました

Stripe Sessions 2025 のプロダクトキーノートでは、世界的に増加傾向にある不正利用への対策についての言及もありました。顧客がチャージバック申請を行った際、企業はその申請が本当に不正利用された決済であるかを調べる必要があります。これはフレンドリー詐欺とも呼ばれる、正当な支払いにも関わらずチャージバック申請を行われるケースを回避するために必要な作業です。そして申請された決済が不正利用ではないと確認できた場合には、クレジットカード会社に対して正当な支払いであるという異議申し立てを行う必要があります。これらの作業は煩雑になりがちですが、売上への影響やカード会社が行う不正発生率モニタリングなどへの影響を考えるとやらざるを得ない作業でもあります。
今回発表された Smart Disputes は、 Stripe が新たに提供する AI を活用したチャージバック対応自動化機能です。カード会社への異議申し立てに必要な証拠の収集や提出といったプロセスを自動化することで、チャージバックが発生した際に生まれる作業時間を節約することができます。
主な特徴
Smart Disputes は、AI を活用したルールエンジンで受信したチャージバックの内容を分析します。その後、 Stripe の中にある取引データ、カード保有者データから関連情報を収集し、クレジットカード会社への異議申し立てを実行します。
このワークフローは手動での調査・異議申し立てフローとも両立できます。これは Smart Disputes は異議申し立ての期日直前にワークフローを実行するためです。そのため、 Stripe Workflows を利用した低額の「不正使用の早期警告 ( Early Fraud Warning | EFW)」に対する自動返金フローや手動での調査・顧客連絡フローとの両立も可能です。

重要なポイントは、「 Smart Disputes が、期日直前に自動で処理してくれる」ということです。ユーザーはメールまたはダッシュボードでチャージバックの発生や EFW の通知を受け取ります。そして、 Stripe Workflows が自動返金しなかった場合は、手動で対応 or Smart Disputes に任せるという対応を選ぶことができるようになります。
つまり、チャージバックが発生した際の対応工数・コストについても、人間がやるべきか Stripe が用意する AI に任せるべきかを選ぶことができます。
Smart Disputes のコストと効果
世界全体では年間550億ドルものコストが紛争によって発生しているといわれます。証拠収集と提出のプロセスは非常に煩雑で、効果的なチャージバック対応には特定の専門知識が必要となることも少なくありません。
Smart Disputes はこれらの課題に対して、次のようなメリットを提供します。
収益回収の向上では、導入企業で13%以上の回収率アップが見られました。また、証拠収集と提出の自動化により大幅な時間節約が実現します。さらに、人的リソースをより価値の高い業務に再配分できるため、組織全体の効率化も期待できるとのことです。
ユニークなのは、 Smart Disputes を利用した場合の費用は「成功報酬制」になっていることでしょう。異議申し立てが受理されて、顧客によるチャージバック申請が取り下げられた時のみ、 Smart Disputes の費用は請求されます。そのため、チャージバックによる売上損失額や対応コストと、成功時のコストを比較して検討することになりそうです。
2025 / 05 時点では公開プレビュー提供中
Smart Disputes は現在プレビューとして提供されています。Stripe Doc でメールアドレスを送信することでアクセスをリクエストできます。

EC サイトや長期的な利用を想定する SaaS / サブスクリプションビジネスでは、チャージバックが定期的に発生します。
Smart Disputes を利用した、対応コストの削減と売上損失の回避をぜひお試しください。